ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

いつまでも涙が零れ落ちて仕様がなかった。
立ち上がろうにも力が起こらなくて困った。



日陰の中にいると気づいたのは涙が零れ落ちなくなってからだ。
さっきから眩しかった日差しが和らいで、変だな…と思い始めた時。


不思議な気がして前を向いた。
視界に見えた黒いパンツの生地には見覚えがある。



「泣き止んだか?」


頭上から声が降ってきた。


「いつまでもそんな所に座り込むなよ」


上半身を曲げて二の腕を掴まれた。


「立つぞ」


声をかけてから引っ張り上げられた。




「あ……っ」


日焼けした人の顔が近づいてくる。


「あーあ。顔がぐしゃぐしゃ」


汗と涙でくっ付いた髪の毛を取り払いながら笑った。
それからきゅっと、軽く体を抱きしめられた。



「こうしてると落ち着く」


そう言って身を預けだすから私は彼を受け止める以外に方法がなくて。



「ケイが居てくれないとヤル気が失せるんだよ、俺」


抱かれたままで言われた。


「ケイに頼られたいんだよ、心底」


腕の力を緩める。
彫りの深い目元が笑って、私の髪を優しく撫でた。


「仕事でもなんでもいいから頼れよ。丸ごと引き受けてやるから」


ニヤリと笑う人の顔は悪戯っぽくも見える。


「ケイも俺が居ないとダメだろ?」


当たり前みたいな言い方をしてる。

だけど、それは真実だと思う……