気持ちの上では何でもできるような気がしてた。

新しい部署だって恋愛だって、頑張っていけるような気がした。


でも、実際には違う。
気負ってばかりで行動が思うようにいかない。


言いたくても言えない言葉が増える。
喉の奥で絡まって、ちっとも出てこようとしない。


こんな私が誰かを癒したりできるわけがない。
こんな私の側にいたって、彼が寛げるはずがない。




「あっ!ちょっと……!」



純香さんの呼び止める声が聞こえた。

慌てて轟さんを呼びに行く気配も感じる。


それでもバタバタと走り出す足音を止められない。


真夏の昼下がり、私は一目散に坂道を駆け下りたーー。