冷めた眼差しで見られた。
それから肘をテーブルに付き、男は偉そうな言い方をした。



「俺で良かったらいてやってもいいぞ」


(誰があんたなんかと!)


一瞬だけそう思った。
でも、この料理をたった一人で食べ続けるのは絶対に無理がある。



「…お願い。……します」


渋々頼んだ。
男はニッと笑い、「しようがねぇな」と呟く。


(しょうがないって言い方しないでよ!元はと言えばあんたが金魚すくいに誘ったからでしょ!!)


ムカムカと腹が立ってくる。
これと言うのも、全部あの二枚舌の郁也のせいだ。


鮮やかなバラ柄の浴衣の子と一緒にいる姿が思い出された。
派手めなメイクをしても映えそうな子が、わざと控え目な感じにしていた。


その分綺麗に思えた。
ゴテゴテと着飾った自分と比べても、郁也が「ドン引き」する理由がわかる。


あの子のように素がいいなら何をしても似合う。
でも、素のよくない自分が派手なメイクをしたり大柄な浴衣を着ても似合うはずがない。



(気合い入れてお金かけて失敗……)


グスッと涙が出てきそうになった。
隣にいるワケのわからないヤンキー男に、そんな惨めなところは見せたくない。



(とにかく今は食べよう)


ぎゅっと握った焼き鳥の串。
やけくそのように口を開けて頬張った。



「……んっ!」


モグッと噛んだ肉が美味しい。
タレの味も丁度良くて、露店にしてはイケる味。