ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

寿神社の前に停められた車に乗り込んでからの1時間、会話が続かなくて困った。

轟さんはいろいろと話しかけてくるのに、私はそれに答える気が湧かなくて。

最後の仕上げのように切り出された新しい部署のことでは、どう答えていいのか迷ったから……


「大丈夫ですよ。それなりにやってます」


結局、その一言で凌いだ。
轟さんは納得してない風にも見えたけど、敢えて聞き出そうともしなくなった。


「そうか」


LINEと同じ言葉で締め括った。
それから暫くの間、お互い話もせずにいた。


幸いと言うべきか、週末の道路はスイスイと流れた。
羅門さんのお店に着いたのは午後12時過ぎで、駐車場にはたくさんの車が並んでいた。




(うげっ、ポルシェ!)


轟さんのですら高級だと思ってたのに、更に上を行くような車が置いてある。


(まさかとは思うけど、「仲間」とかって人の車じゃないよね!?)


だとしたら困る。
セレブな人達との関わりなんて、まるで経験がない。



「行くぞ!」


この人には私の混乱さがまるでわかってない。


「ははは…はいっ!」


でも、逆らうこともできないでいる。

近づくと背中に添えられる手の平。
フェミニストなんだかヤンキーなんだか知れない。



「羅門!」


この間と同じく入ってすぐに呼んだ。


「おー!」


厨房の奥から白衣に身を包んだシュフスタイルの人が現れる。