ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

ぶすっとムクれる私の顔を睨みつけて歩き出す。
背中を追いかけながら少し反省させられた。


「あの……」



背中に向かって声をかけた。
振り向きもしない人は、前を向いたまま声を発した。


「ダチに会わせるから」


ダチ…と言われて、「友達」のことだと気づく。羅門さんには二度会ってるけど、それ以外の人ってこと?


「ととと、轟さん!?」


緊張した途端、名前で呼ぶのを忘れてしまった。
振り向いた彼は、半ば呆れる様な顔をしてる。


「大輔」


何度も言わせるなという感じで訂正された。


「す、スミマセン。だ…大輔さん……」


名前を言い換えるだけで聞こうと思ってたことがぶっ飛んだ。
何言うんだっけ…と考えてるうちに背中を向けられてしまった。



(ああ……また失敗……)


どうしてもこうなる。
話を続けたくても言葉が見つからないし声も出ない。

カクンと首をうな垂れて歩いた。
ショボくれてる私の前に、スッと差し出される手の平。
握れと言わんばかりの状態に、体は逆に動かなくなってしまい……。



「あーもう!」


業を煮やしたように声を張り上げ、強引に繋がれてしまった。


「今日のケイはおかしい!」


怒ったように振り向いて怒鳴る。
眉尻が上がってる。
唇の端も下がってるし、心なしか頬が引きつってるような……。


「ごめんなさい……」


謝るしか能がなくて。


「謝んな!」