ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

電車に揺られてる間、沈み込んでいきそうな気持ちを奮い立たせて座ってた。

最寄の駅に着いてみたら、改札の前には爽やかな笑みを携える轟さんの姿があって……


「ケイっ!」


嬉しいのと同時に泣き出しそうになってしまった。
安心とかそういうレベルの問題じゃなく、ナゼかとっても悲しい気持ちにさせられた。



「……ごめんね。待たせました?」


辛うじて涙を堪えて笑う。
目の前にいる人は髪の毛を逆立ててもないし、スーツも着てない。
白いTシャツは日焼けした肌に似合ってて、黒いカーゴパンツは足を更に長く見せてる。


「今来たばっか。待ってねぇ」


サングラスを外した人が微笑む。
堀の深い顔立ちをした人の目が綺麗な曲線を描いてる。


「き、今日はボランティアはお休みなんですか?」


アロハシャツはボランティアグループの制服なんだと聞かされた。
そう言えば友達の羅門さんや他の人達も同じものを着ていた。


「夏だからって毎週のように祭りはねぇよ」


砕けた物言いは相変わらず。
そういう言葉遣いだからヤンキーみたいに感じるんだ。


「ふぅん」


今週はあって欲しかった。
今日みたいな暗い気持ちで轟さんに会うのは苦しい。


「なんだよ、そのつまんなそうな返事は」


この人にはデリカシーとかいうものが無いのか。


「別に。つまんないとか思ってません、けど」


気持ちが浮かないだけ。
それも貴方のせいじゃない。