そう言ってる矢先にテーブル席に届けられた食べ物。

モツ煮込みにポテト、お好み焼きにタコ焼き、焼きそば。



『女子にはアイスクリームも人気だよ』


そう言う店主に向かって『じゃあそれも頼む』と言ってる。

そんなにいっぺん頼んでどうする。
全部私に食べろって言うの!?



ーー不安に思って声をかけた。
ヤンキー男は振り返り、私の言葉を待ってる。



「あの……これ……」


目線を落とすと、男はフン…と鼻息を荒くした。


「あんたが金魚すくいに使った分のお金で買った。遠慮せずに食べろよ」


食べろよ…と言われて、素直に、はい…と言える量じゃない。
一人で食べきれるはずもなく、唖然としつつも言い返した。


「一人でこんなに食べれない!……です」


強気に言うのはやめておこう。
どんな逆恨みをされるか知れない。


「だったら家に持って帰ればいい。ここでゆっくり寛いでステージの催し物でも見とけ」

「ひ、一人で!?」


思わず身を乗り出してしまった。
私のことを見ていた目が丸くなって聞いた。


「嫌なのか?」


気合の入った格好で一人で祭りを楽しめるワケがない。
片方しか履いてない下駄のことを思っても、そんな気分にもなれない。


「…………」


悔しさを思い出して黙り込んだ。
噛みしめた唇に力を込め、コク…と首を項垂れた。


「ふぅーん」



ダメだ。バカにされる。