「分からないけど…なんとなく不機嫌なの。パソコンいじってる手の動きが荒々しいし、ガチャガチャ言わせながらキーボードを操作してるのよ。

祐輔さんにも機嫌の悪そうな態度でいるの。時々あることだから、彼は全く気にも留めてない風だけど」


つるんと冷麺を飲み込んで真綾は話すのをやめた。
トップ二人のことをあれこれ話すのはマズいと思ったみたい。


「そんな空気の中で仕事するのもやりきれないね」

「だから、ここへ来てるんでしょ」


笑い合う二人に、私のことが原因かもとは言えなかった。
大輔さんにしても真綾と同じで、寝耳に水の異動だったに違いない。


(それでさっきメッセージを送ってきたんだ…)


私に商開部の仕事ができるわけないと思った?
アガリ症が出て誰とも話せないでいると思われた?



(確かにそういうことにもなり兼ねないけど……)


開発商品の説明を受けてる最中、私が検品した時の意見が採用されてる部分があった。

すぐに開発に役立てる人間にはなれないと思うけど、いずれはそうなってみたい。

勿論そんな人間になる前に、部署の人達に慣れる必要があるんだけど。


「ゆっくりやればいいよ、ケイ」

「そうそう。蛍なら大丈夫」


友人二人はそう言われ、うん…と答えたものの自信なんてまるでない。


午後からも憂鬱。
明日からはもっと気が重い。