ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「ケイちゃんのデスクはあそこだよ。僕の近くだから安心していい」


…とか言って案内するし。
先ずはその前に、急な異動の理由を説明をして欲しいんだけど。



「ぶ、部長……」


今度は役職で呼んだ。
叔父さんは振り返り、ん?と顔を傾ける。


「わ…私、どうして変わることになったん…ですか?」


検品課でミスでもした?


「ああ、今朝出社したら社長室に呼ばれてね。ケイちゃんを自分の部署に置いたらどうかと打診を受けた」

「だ…誰から…」


ドキンと胸の音が跳ね返った。
まさか…と思いながら、叔父さんの顔を見つめる。


「社長だけど」

「えっ」


意外な答えに狼狽える。


「あ…あの……」


どうして接点もないのに。


「ケイちゃんの検品書を見て思ったんだって。前から考えてたらしいよ」

「前から?」


「図説付きで見易いって。商開部で活躍してもらえば?って言われたんだけど……」


もしかして重荷だったかい?と尋ねる。


重荷には違いない。
吃るし、話すのもニガテでアガリ症だし。



(でも……)


郁也にバカにされて以来、そんな自分を変えたいと思うことが何度かあった。
土曜日も轟さんの側にいる間、ずっと自分が惨めな気がしてばかりでイヤだった。


副社長の肩書きを持つ人の横で笑っていられる人になりたい。
今すぐはムリでも、いずれは別の人種に生まれ変わりたい……。