ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「私は、何も……持ってないし、どんなにいいこと言われても……やっぱり自信は持てないし……検品しかできないし、吃ってばかりで、話すのもニガテで………」


つまんないって思われるのがオチ。
そのうちきっと、轟さんも私のことを選ばなくなる………



「でも、俺のことが好きだろ?」


真っ直ぐな瞳で問いかける。
その目に引き込まれそうで、思わず逸らしてしまいそうになった。



「ケイ」


目の前にいる人が顎を持ち上げた。
人差し指で支えられて、俯くこともできない。


「ちゃんと答えてくれ。好きか嫌いか」


その答えを言ったら何かが変わる?
私はシンデレラになれる?



「す……」



き…だと言えたらラクなのに……。



「き…キラ……」


グイッと更に上がった顎のせいで、一瞬息がつまりそうになる。
寄ってきた人の顔が、間近に迫った。



(ひゃっ…!)


あの夜と同じように目を瞑った。



「俺は好きだ」


撃ち抜くような言葉と共に抱きしめられ、息苦しいくらいの温もりを感じる。


「ウソを吐くな。ケイには似合わない!」


絞り出すような声に胸が狭まる。

確かにウソはキライだ。

吐くのも吐かれるのもイヤ。

だけど……



(違いすぎる相手だから……)


声にも出せない。
キライにもなれないと分かってる。