「ふざけんな!って怒鳴り散らしてやりたかったよ!そこが警察でなかったら…!」


怒りを表に出したことを反省してるように俯いた。
こんな強い怒りを抱いたまま、この人は大人になったのか。




「サツにさ……」


警察のことも略して呼んだ。


「俺と母親は、もうこいつとは他人だから引き取れねぇって言った。事務的な処理一つで、骨はあっさり行く場所が決まった」


残念そうにも聞こえる。安堵したはずなのに、胸の奥が苦しい。



「……金魚はどうしますかって聞かれて……」


少しの沈黙の後、声のトーンを落として言いだした。
金魚と聞いて、ピクン…と耳が動いた。


「…金魚……?」


副社長が飼ってると聞いた金魚のことを思い出した。


「あのヤロー、浮浪ってたくせに金魚なんて飼ってたんだよ。どこ行くにも、いっつも一緒に持ち歩いてたんだと!」


バカみたいでやってらんねぇだろ…とせせら笑う。


でも、その金魚を見せられた時………




「ケイのことを思い出した」


「えっ……」


「色が三色で、ケイが着てた浴衣と同じだと思った。それで、そいつだけは連れて帰ってやろうと決めた」



「あ…あの……」


そんな理由で金魚を……?


「家に持って帰ったら兄嫁に見つかってさ。誰にもらったの?と、聞かれるんじゃねぇか…とヒヤヒヤした。でも、さすがは社長の秘書だ。なーんも聞かねぇで、『可愛いわね』とだけ言った。