「寿神社の祭りの日、片付けをしてるところへ一本の電話がかかってきた」


いきなり本題に入るような言い方をされ、キリリッと神経が引き締まった。

ドキドキしながら轟さんの口元を見る。
何を言われるのかと思うと怖くて、耳を塞ぎたくなった。


「…警察からだった。身元のわからない浮浪者の遺体確認をしてもらいたいということだった」



「……浮浪者…?」


(ナゼ、そんな電話が轟さんに?)


瞬きをする私の顔を見て頷いた。
笑ってもない彼の表情が、俄かに曇り始めた。


「……トンズラしてた親父かもしれないって言われた。こっちは行方不明者として捜索願を出したことすらも忘れてたのに」


過去を思い出したような顔つきで地面を睨みつけた。
今更のように突き付けられた現実を恨むような顔をしてる。


「……行かれたん…です…か?」


恐る恐る伺った。


「まさか」


吐き捨てるように言った彼に、ホッとする間もなく言葉は続いた。


「そんなことするもんかと思ったけど見に行った。アイツだったら絶対に許しちゃおかねぇって気持ちが、心の何処かにあったからだ」


痛そうなくらい奥歯を噛みしめてる。
その横顔が怖いくらい怒ってて、やっぱり聞かなきゃ良かった…と思い始めた。



「警察へ行ったら、一枚の写真が手渡されて。どっかで見たことあるな…と思ったら……」


そう言いながら胸の内ポケットを探る。