「悪いけど、金魚すくいの店番頼む。俺、コイツと一回りしてくるから」


コイツと言いながら私を親指で差す。


「何だよ、ナンパでもしたのか?」


面白そうにからかって、水風船屋は立ち上がった。


「違う。イチャモン付けられたんだ。話つけてくるから後を頼む」


「ほら来いよ!」とばかりに腕を引っ張った。
改めてマズい雰囲気に、オドオドとしてしまった。



(話をつけるって……どうなるの!?私……)


怒りが冷めてきたら、ようやく自分の立場がわかりだした。


どうやら私はヤバい人を相手にケンカを売ってしまったようだ。
楽しいお祭りの雰囲気をぶち壊し、店の営業を妨害したらしい。


(でも、元は言えばコイツが……)


引っ張りながら歩く男の背中を見た。
肩を怒らせてる人に、これから何をされると言うんだ。



(えーーん、怖いっ!)


急に心細くなってしまった。

一世一代の賭けのつもりで来たお祭りが、一転大ピンチに陥ってる。



(誰か、助けてーー!)


声も出せずに連れて行かれた先で、私は思いがけない待遇を受けた。