「……恵まれてますね。副社長は」


私なんかよりも数倍いい環境が揃ってる。



「うん。少なくとも今はそんなふうに思えることも多くなった」


今は…という言葉が引っ掛かる。前はそんなこともなかったのか。



「寿神社の祭りに日にさ……」


思いきったように振り向いた彼に目を向けた。

話そうとする轟さんのことを見つめながら、私は今夜のことを忘れないでおこうと決めた。


「……この話、まだ誰にも言ってないんだ。多分この先もきっと、ケイ以外には話さないと思う」


秘密を共有するっていうの?
それが私達の何になる?



「あの……」


そもそもその話、私が聞いてもいいもの?
私にしか話さないって思うからには、かなり重要な話よね!?

会長と轟さんのお母さんとが再婚だってことも聞いて良かったの!?
私は貴方にとって、オフィスの一社員でしか過ぎないのに……。


「ど…どうして、わ、私以外には、し…しなんですか?」


緊張しながら聞いたから吃ってしまった。

体ごとこっちを向いてる彼は、涼しげな表情をしてる。

私が感じてる焦りすらも気にならない様子で、真っ直ぐな目線を向けられた。


「ケイ以外に話せるヤツがいねぇ」


簡単そうに言いのけた。
私はますます緊張の度合いが高まってしまって。


「あああ…あの、わ、私には荷が、大きいかとお、思います、けど……」