(どうして、こんな話をするんだろう……)
自分の生い立ち話を聞かせて、なんの意味があると言うんだ。
「会社に入ったばかりの兄貴から電話があったのは高1の時だった。自分の母親が大切なら仕事ぶりを見に来いと言ってきた」
真綾のご主人が社長として働く前のこと。
この話を、真綾も聞いたことがあるんだろうか。
「あの……(どうして私に話すの?)」
聞きたいけど聞けずに口を閉じた。
チラッとだけ視線を下ろした彼は、空いてるベンチを指差した。
「足痛いだろ。座ろう」
さっさと自分が先に腰かけ、ポンポンと隙間を手で叩く。
確かに指の根元がジンジンとして痛い。
立ってるのもおかしいから、距離を置いて座った。
一人分ほどの隙間が空いてる。
それを眺めながら、轟さんは話を続けた。
「俺をオフィスに呼んだ兄貴は、こっそり社長室の隣室へ連れてった。『自分の母親がしてる仕事を見ておけ』と言い残して、自分はさっさと仕事へ戻る。なんだと呆れた俺は、母親が兄貴にグチでも零したのかと思いだした」
クッ…と仕様がないように笑った。
その笑い声に合わせることもできなくて、「はぁ」と小さな声で頷いた。
「子供じゃねぇんだから…と呆れた。でも、戻るのもメンドくさいから居ることにした」
轟さんが働いてる母親を見たのは初めてだった。
デスクについて書類整理をしたり、電話でアポを取ってる姿は様になってたらしい。
自分の生い立ち話を聞かせて、なんの意味があると言うんだ。
「会社に入ったばかりの兄貴から電話があったのは高1の時だった。自分の母親が大切なら仕事ぶりを見に来いと言ってきた」
真綾のご主人が社長として働く前のこと。
この話を、真綾も聞いたことがあるんだろうか。
「あの……(どうして私に話すの?)」
聞きたいけど聞けずに口を閉じた。
チラッとだけ視線を下ろした彼は、空いてるベンチを指差した。
「足痛いだろ。座ろう」
さっさと自分が先に腰かけ、ポンポンと隙間を手で叩く。
確かに指の根元がジンジンとして痛い。
立ってるのもおかしいから、距離を置いて座った。
一人分ほどの隙間が空いてる。
それを眺めながら、轟さんは話を続けた。
「俺をオフィスに呼んだ兄貴は、こっそり社長室の隣室へ連れてった。『自分の母親がしてる仕事を見ておけ』と言い残して、自分はさっさと仕事へ戻る。なんだと呆れた俺は、母親が兄貴にグチでも零したのかと思いだした」
クッ…と仕様がないように笑った。
その笑い声に合わせることもできなくて、「はぁ」と小さな声で頷いた。
「子供じゃねぇんだから…と呆れた。でも、戻るのもメンドくさいから居ることにした」
轟さんが働いてる母親を見たのは初めてだった。
デスクについて書類整理をしたり、電話でアポを取ってる姿は様になってたらしい。

