ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

『何言ってんの。蛍は私の友人でしょ!』


あれこれ相談に乗ってもらったんだから当たり前じゃない…と言ってくれた。
それが私には有難くて、ホントに初めて親友ができたような気がして……。


結婚式の当日、着物を着せてもらいながら祖母に真綾の話をした。
社長さんと結婚するんだと言ったら、祖母が目を丸くして……


『そりゃ凄いね。真綾ちゃんも凄いけど、相手の人が立派だ』


さすが企業のトップだと言ったんだ。
外見だけじゃなく、人柄を見たんだろうねってーーー。



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(この人は……)


背中を見ながら考える。

この人はどうして私のことを気に入ったんだろう。
あの日着ていた桜柄の振袖が、単に珍しかっただけじゃないのか。
オフィスで見かけてたとは言っても、私は常に下ばかりを向いて歩いてたから、どんな顔かも見てなかったはずなのに。


後ろを歩く足元に海辺からの風が吹いてくる。
通りすがりに聞こえてくる親子連れの声が、すごく幸せそうだ。



「……俺の親、再婚なんだ」


そう言った声に目線を上げた。
振り向いた人が小さく笑い、次の言葉を付け足した。


「俺が高校の頃、母親が轟 拓磨(とどろき たくま)さんと結婚した」


轟 拓磨さんというのは、オフィスの創設者でもあり、現在の会長でもある人。
小さなおもちゃ屋さんから始まったこの会社を引っ張って、全国区になるまで引き揚げたんだ。