耳の奥に響くパイプオルガンの曲。
楽しそうな子供の声と明るく笑い合う大人達の声。
ここは紛れもない明るくて楽しい場所。
なのに、私一人が孤独みたいでーー。



(こんな私といても楽しくないでしょ…)


背中を向けてる人に心の中から囁きかける。
私はいつもこんな感じだった。
人目ばかりを気にして、上手く話ができない。

だから、あの時はホントに嬉しかった。

四年前の入社式の日ーーー



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『ねぇ、貴女どこの大学出身?』


左隣にいた聖が声をかけてきた。
ビクッとなる私に笑いかけ、自分はM大だと言った。


『M大!?私はS女よ!』


右隣にいた真綾が話に加わった。
M大もS女も成績優秀者が行く大学だ。


『わ…私…T芸大……です』


ありふれた芸術学校の名前を言った。
三人三様、学歴も全然バラバラだった。


『同期生としてよろしくね!』

『嫌なことがあったら愚痴り合いましょう』


アドレスと番号を教え合った。
それからオフィスで会う度に話をするようになった。


初めてできた友達らしい関係の二人。
私には無いものを兼ね備えてる二人を見る度に、自分が金魚に付いてるフンのようにも思えた。


距離を置こうかと思う時もあった。
でも、二人は二人なりに悩みも深くて、特に真綾からの相談を受けた時は私も聖も驚いた。




『上司に迫られて困ってるの』