光に包まれたミニ遊園地には、たくさんの親子連れが集まってた。
水天宮から近いこともあり、花火大会が始まるまでの間、丁度いい時間潰しになるようだった。



「今日は盛況だな」


手を握ったまま歩く轟さんはそう言って辺りを見回してる。

私は首をうな垂れたまま、地面に並ぶレンガばかりを見てた。


中央に建つチケット売り場へ向かった。
前に買ったのと同じ6枚綴りの券を買い求めて、彼が私の方へ振り向いた。



「何に乗る?」


頭の上から声がして、上げる気にもならず押し黙った。
アトラクションに乗る気は起こらない。むしろ一刻も早く帰りたい。



「……任せます」


轟さんが答えを待ってるようだったから呟いた。
ホントはあの観覧車に乗って、夕日を眺めようと思ってたけど。



(もう星が見えてるし……)


駅に着いた頃は茜色の空が広がってた。だけど、今はすっかり闇一色。
海辺のネオンが光って、空を明るく照らしてるだけだ。



「任せるか…」


はっ…と短い息を吐く。
無理矢理じゃないけど、連れてきたのはそっちでしょ。

顔を上げない私に呆れてるのか、少しだけ沈黙が続いた。
郁也と初めてデートした時も、同じようなことが何度もあった。


「少し歩こう」


言われるがままに足を進める。
出たり引っ込んだりする足の隙間から、さっき手当てしてもらったばかりのカットバンが見えて悲しくなる。