たった一度だけ訪れたステキな夢の国。
あの光の中で、私はお姫様になれた。


(……でも、あれはやっぱり現実じゃない)


あれはホタルに起きたこと。
ヤンキーな上司との恋は、お祭りの夜に幕を閉じたんだ……




(……帰ろう)


いい思い出だけど忘れる。
二度と起きない奇跡だ。


コロン…と駅の方へ向かって下駄を鳴らした。
カラン…と後ろの足も引きずる。



「乃坂さん」


ビクン!と背筋が伸びた。
ギクリとして振り返ると、そこにいたのはヤンキー上司じゃなく……



「副…社長…」


アクアリウムの時と同じ、スーツを着た彼。



「最初から仕切り直そうぜ」


そう言って近寄ってきた人が私の手を握った。



「行こう」


導かれるようについていく。




(ナゼ……)



もう一度夢が見たいの?


副社長との恋は叶わないのに………