郁也に両天秤に掛けられたのを知って、ヤケクソだったんだから仕方ない。
神様への祈願だと思えば安いもんだった。


「好きなだけやらせとこうかとも思ったけど、追われてるキャリコが可哀相になってきて、それくらいにしとけと言った」


事情聴取のやり方を変えようと思ったんだそうだ。


「旨いもん食べれば気分も変わるかと思ったけど……」


…変わったよ。確かにウサは晴れた。
でも、それは美味しい物を食べたからじゃなくて……


「カレシに二股かけられた話をしてるケイは腹立たしそうだった。そんなにあいつのことが好きだったのかなって、ショックみたいなもんを感じた」



「えっ…?」


どうして貴方が?


「俺はずっと前からケイのことを気に入ってたから」


「はっ……?」


「初めて意識したのは1年以上前だったかな」


(ん…!?夏祭りよりも前!?)



昔、昔…の、そのむかし……?


「兄貴たちの結婚式に来てたろ。桜の振袖着て、髪を結い上げて」


轟さんの話を聞いて思い出した。
真綾の結婚式に招待されて、成人式の振袖を着て出席したんだ。


「ドレスの中で一人だけ着物だった。お淑やかそうに見えて雰囲気の違う子がいるなって思った」


それもイヤな思い出だ。
帯が苦しくて、一人だけ目立ってた。


「…あ、あれは、祖母が着て行きなさいって言ったから……」