(えーい!もういいや!)


シワの無いお札を放り込んだ。
木箱に入ってくのを確かめて、谷口と一緒に鈴を鳴らした。



『ガラン!ガラン!』


銅製の鈴の音が鳴り響く。
大きく柏手を打ち、ぎゅっと目を瞑った。



(人のお金でゴメンなさい!)


先ずはひと謝り。
それから願い事を言った。


(どうか、この御賽銭をくれた人との恋が成就しますように!)


アガリ症も吃りグセも治らなくていいから、自分らしい自分のままで素敵な恋がしたい。

相手が谷口さんならいい。

彼も私を好きでいてくれますように!!



(お願いしますっっ!!)


水天宮に祀られてる神様は恵比寿様だったと思う。
でも……


(大漁祈願や安全祈願じゃないけど、エビでタイが釣れるような恋をさせて!)


もはや何を祈ってるのか訳がわからなくなってきた。
とにかく今は、念じるだけで精一杯。


顔を上げると谷口に背中を押された。
私が長々と願ってるもんだから、後ろの人達から冷たい視線を注がれてたらしい。



「また念じてたろ」


人波に逆らうように歩き始める。


「だって神様にはなかなか会えないもん!」


この間と同じことを言う。


「尤もだけどな」


呆れてる。私は真剣なのに。



「今夜もやるか?」


店先で指差された。


「も…もちろん!」


リベンジしてやる。