ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

飾らない。
盛らない。
光らない。


ギャップだらけだけど、これがホントの自分。


「こんな感じの私でも一つだけ言いたいことがある。……わ、私、谷口さんのことが好き!貴方に会えて…良かったと思う。ここ、これからも一緒に…会えたらいいなって、思う。でも、あ、貴方は……」


緊張して吃り始めた。
これが自分だとわかってても、やっぱり恥ずかしくなってくる。


「貴方は……違うかも。…わ、私とはもう、会いたくないかも……」


魔法が解けてしまえば後に残るのは現実だけ。

ウラシマはお爺さんになった。
シンデレラは灰かぶり姫に戻った。

アガリ症で吃りグセのある私はホタルからケイになり、貴方はヤンキーから副社長に変わる……?



谷口は黙り込んだまま私の話を聞いてる。
何をどう言うべきか、迷ってるんだろうか。



「なんとか言ってよ!」


一生懸命なんだよ、私は。

手に汗かくくらい、緊張が高まってるの。


ポカンとした顔してないで何か言って。

聞くだけならお地蔵さんだってできるんだから!!




「ねぇ!谷口さんっ!」


つい叫んでしまった。
完全に興奮しまくってる。


ハッとした顔を見せて、谷口がサングラスを外す。
二重のスジがくっきりと入った目を見せて、忙しく瞬きを繰り返した。




「知ってる」


やっと開いた口から零れ落ちた言葉。
何を…と言いたくなる私の手を握り、いきなり歩きだした。