ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「……ってぇな」


ギロッと睨み返す。


「な…なによ」


元はと言えば、そっちが要らない世話をするからでしょ。
ほっとけと言ってるのに、無理に下駄を脱がそうとするからじゃない。


「大人しくしとけよ。バタバタ暴れたら怪我をしても知らねーぞ!」


最後にドスを効かせた。
ビクッとなる私を見定めて、無言で下駄を脱がせる。



「ちょっと大きかもしれねぇけどいいよな」


ブカブカ過ぎるビーサンを無理に履かされた私。
満足げにするヤンキー男の顔をムッとしたまま睨んだ。



「やりなよ。1回200円」


ニヤリと笑う男を見つつ、さっきやろうとしていたことを思い出した。



「…わかった。やればいいんでしょう」


ゴソゴソと手提げカゴの中に手を入れた。
取り出した長財布から『福沢諭吉』を選んだ。


「これだけ分させて。金魚無くなっても文句言わないでよ!」


「えっ……」


投げるように手渡した諭吉を見つめ、金魚屋の男は呆然としてる。


「よしっ!じゃんじゃん掬うぞ!」


勢いをつけてしゃがみ込んだ。

隣にいた小学生は、ビクッとしながら私を見た。


「気にしないでいいから」


お構いなしで水の中を見つめる。

赤い鮒みたいのやら黒い出目金がウロウロしてる。
その中に一匹だけ、黒と白と赤が混じったのがいた。


(よし、アレを掬おう!)