ただあの子になりたくて



こんな劇じみた臭いことをこの口で言ったのかと思うと、一瞬にして鳥肌が立つ。

恥ずかしくて、今更顔にかあっと熱が集まった。

「では、今日の練習はここまでね。また明日、次の場面からやるのでよろしくお願いします! それでは解散!」

みんなで気持ちよくお疲れ様とあいさつを交わすと、私は汗ばんだジャージを着替えに足早に去った。

相も変わらず、病欠扱いのままの本当の私は、クラスメイトにろくに気に留められることもなく、平穏に過ぎている。

ヒロインの座も務まりそうで、椿としてうまくやれてもいる。

見た目からわく自信はすさまじいものだ。

全てがうまくいく気がする。

私は今までになく軽い足取りで、太陽にきらめく廊下を駆けた。

この椿の体さえあれば何でもうまくいくと、私には自信がみなぎっていた。

だから、さっさと着替えを澄ませると、そっと扉に手を添え、教室をのぞき込んだのだった。