そんなダメな私の意識があまりに深く根付き過ぎていて、気づけなかった。 あまりに遅すぎる。 今の私の外身は、椿なのだ。 中身が私でもうまく立ち回れるだろうか。 こんな私でも、ずっとなってみたかったヒロインを演じることができるのだろうか。 この椿の体さえあれば。 「……あ、野々原椿さん……?」 こんな仕草、椿らしくないのはよくわかっていた。 けれど震えてしまう。 恐れながらやっと肩の高さにまで上げていた小さな手が。 「私で、よければ……」 声が上ずった。