ただあの子になりたくて



後ろで蒼介たちとお母さんがあいさつをしていた。

何がありがとうだ。

思ってもいないことを言うな。

お母さんの全ての言葉が、嘘にしか聞こえない。

熱くなりそうな目頭が、何だか悔しくて顔に力をこめる。

私は、気味の悪い抜け殻の自分と、あんな嘘つきの前から、ただ遠ざかりたかった。

だから、白い廊下を夢中になって突き進んだ。

エレベーターも使わずに、階段を駆け下りた。

そして青空の下に出ると、私ははようやく立ち止まり、まともに息をした。

後から、小走りな2人の足音が追い付いてくる。

ついに私の前に回り込んだ拓斗は膝に手をついて息をつきながら、悩まし気に眉根を寄せて言った。