ただあの子になりたくて



わかり切っていたけれど、私がこんな風になっても、親は何一つ変わらない。

呆れればいいのか、悲しめばいいのかわからなくて、ただ下を向くしかなかった。

「ごめんなさいね」

平然と余所行きの声を出して戻ってくる。

さっきまであんな声を出していたくせにと、奥歯を噛みしめる。

もう、お母さんの前になんていたくない。

私はもう踵を返していた。

「私たち、そろそろ帰りますね。ありがとうございました」

耐えられなかった。

顔もろくに見ずに、下げたくもない頭をほんの少し下げて、私は病室を後にする。

「あっ、椿……。また来ます。なずなが意識取り戻すの祈ってます」

「ありがとう……。気をつけて帰ってね」