何が事故だ。
わかっているくせに、白々しい。
自分かあの夜、私に言ったことを忘れたわけではないだろう。
事情を知らなくても、踏切で事故なんて察しが付く。
お母さんは私の最期まで、建て前ばかり大事にする。
「すぐに処置してもらえて、今容体はひとまず安定してる」
そしてすぐに話をそらした。
「でも、先生は一命をとりとめただけでも奇跡だと言ってたわ。意識も戻るかはわからないし、それどころか、いつ危ない状態になるかわからないって……」
さも悲し気に、顔を手で覆うとするお母さん。
意識なんてそれはもちろん、戻ることはないだろう。
意識はそっくり椿の体に入っているのだから。
でも、私が死んでも、お母さんはきっと悲しみはしない。


