ただあの子になりたくて



借り物の体を固くこわばらせる。

わからなくて、不安なことだらけだ。

「俺、ちょっと病室聞いてみてくるから」

蒼介はそう言いながらすでに守衛のおじさんに駆け寄っていた。

私は椿になってもなお、その揺れる背中を追えずに黙って立っている。

今の私は恋人の椿なのだから、何も負い目なんてないはずなのだ。

入れ物が変わっても、中身がこれではだめだと苦笑いすら漏れてきそうだった。

でも気持ちを切り替えて、隣にいる拓斗をちらりと見る。

ぺしゃんこで大人しい短髪、彼にしてはつまらない白いTシャツと普通のジーンズ。

あのナンパな拓斗のこんな格好なんて、すごいレアものだ。

だからそれこそ、今回のことはただ事ではないと思われている。