ただあの子になりたくて



急いで見回したクローゼットの中には、私が普段着るようなカジュアルなものは何もなく、そのうえ時間もなかった。

椿の体だからいいけれど、少しソワソワしてしまう。

「おい、椿! 遅い」

声に顔を上げると、病院の入り口わきの植え込みのところで、珍しく神妙な面持ちをした拓斗が私を手招いていた。

隣には、蒼介も立っている。

せっかく蒼介と会えるというのに、私は表情をおさえ、二人の元へ駆け寄った。

「ごめん、遅くなって」

決まりがあるのかは知らないけれど、とりあえずばれてはいけないだろう。

ちゃんと椿になりきれているだろうかと緊張しながら、二人の顔をそっとうかがう。

拓斗は怪訝そうに眉根を寄せて渋い声を出した。