ただあの子になりたくて



そう、何も言えないのは、それが事実だから。

自分がどうでもいい、自分がいなくなれなんて大嘘。

私の本当の心は、真っ黒だ。

「僕と契約をしよう」

幼い声は、甘やかに私を誘う。

「こんな何もない世界で生きる僕に、君は面白いものを見せる。その代わりに、僕は君の願いをなんでもひとつ叶えよう」

しゃくりあげたまま、私は私の姿を見た。

こんな真っ黒な自分に、私は見捨てることなく柔らかく笑いかけてくる。

そうして、私の小さな掌が、私に向かってのべられた。

「さあ、君の願いを教えて?」