ただあの子になりたくて



胸の奥から汚く黒い何かがせりあがってくる。

記憶の中の、朗に笑う椿が醜くゆがんでいく。

きつく視界を閉ざす。

けれど、次々に黒い視界の中によみがえる。

蒼介と肩を並べて笑いあっていた椿が。

蒼介の好きなバンドのCDを大切そうに借りていた椿が。

蒼介の腕をつかんで引っ張りながら元気に走っていた椿が。

今日、抱き合っていた2人の姿が。

「もうやめてぇ!」

私はかき消すように泣き叫ぶ。

「君のとてもとても健気な、彼のそばにいたい、たったそれだけの想いを踏みにじったのは、椿なんだ」