ただあの子になりたくて



そいつは涼しい顔をして立ち、悠然と私の周りを歩き出す。

あのいやらしい形に変貌した唇で、続々と言葉を紡ぐ。

「椿が現れなければ、君は今も甘い恋を続けられた。大好きな彼の隣にいられた。仲良しグループの中で引け目を感じることはなかった。胸が張り裂けそうな想いも味わうこともなかった。君が、自殺なんて選ぶことは絶対になかった」

「やめて。もうそれ以上言わないで!」

私は金切り声で叫ぶ。

頭がおかしくなる。

胸が張り裂ける。

「全部全部、椿のせいさ。君が愛されなかったのは」

「イヤー!」

もう悲鳴になっていた。