ただあの子になりたくて



頬は光っているけれど、彼は確かに笑っている。

私の大好きな彼の笑い方で、輝いている。

そして彼は力いっぱい涙をぬぐい、前を向いて踏切の向こうへ歩みだす。

私は泣きながら笑顔でその背中を見送る。

もう、みんなの顔は十分にこの目に焼き付けた。

思い残したことが一つもないと言えばうそになるけれど、彼の笑顔が最期に見られればこのほかに一体何を望むことがあるだろう。

お父さんもお母さんも、拓斗も椿も、蒼介も前を向いて歩きだしている。

次は私の番だ。

私は横を向く。

隣で丸まって体育座りをしている私がいる。

私は私にそっと手を差し伸べた。