その二人の手には、真っ白な少しよれた一枚の便せん。

「ごめんなさいね、なずな。ありがとうね、なずな」

突然聞こえてきたその声に私は、歯を食いしばって口を閉ざす。

あの手紙を読んでくれたのだ。

ほんの少しでもお父さんとお母さんに届いただろうか。

心に残る後悔と、懺悔と、私に命を与えてくれた感謝の気持ち。

この気持ちに、生きている間に気付けたなら、私たちはもっと素敵な家族になれていたかもしれないけれど、わからないまま死なずによかったと心から思える。

旅立つ私が最期に願うのはただ一つだけ。

でもそれも私が祈らなくても大丈夫そうで、柔らかく目を細めた。

お父さんのたくましい手が、お母さんの肩を強く抱き寄せる。