ただあの子になりたくて



「待てよ。その困ったような笑い方椿じゃない。言ってることも椿じゃない。信じられないけど、そうとしか思えない。なずななんだろ」

私に組み敷かれた彼が、私の真下で、力強く私だけに真っすぐに囁く。

息ができなくなった。

どっと漏れそうになる嗚咽を必死に抑える。

絶対にありえない状況だ。

誰かになり変わるなんて、現実にありえない。

それなのにまた、彼に見つけてもらってしまった。

でも、私は下唇を噛みしめながら思う。

こうして椿の体を奪って過ごしてきた私が、どうしたら「はいそうです」と返せるだろうか。

これから死にに行く私がわざわざ名乗りを上げてどうしようというのだろうか。