でも、私はその痛さなんてみじんも感じない。
胸をいっぱいにする熱い想いに、私は情けなく顔を歪めた。
「本当はもっと違う伝え方にしたかったんだけど、私不器用だからさ……、ごめんね」
私が落とす声に、彼は見開いていた目の力を徐々に抜いてく。
半信半疑なままの真っ黒なその瞳で、私だけを見つめている。
嘘のように何の音も聞こえない。
余計なものも見えない。
彼と私、たった二人だけの空間に迷い込んだみたい。
まるで夢の中のよう。
周りに大勢の観客と、クラスのみんなと、そして椿が待っているのはわかっているけれど、あともう少しだけ時間をくださいと、私は心の中で祈りをささげる。


