ただあの子になりたくて



私は情けなく息を吐くように微かに笑った。

ナイフを突き立てたのは、彼の左耳のちょうど真横。

私たちは、舞い上がって乱れた布団に埋もれて、観客の目から隠された。

ここは正真正銘2人だけの空間。

まるで声をとられたみたいに何も言えない彼に、私の長い髪が落ちて降りかかる。

布団と、黒髪に埋もれて、当惑する彼と向き合った。

私は誰にも聞こえない微かな声で呟く。

「ごめんね、こんなことして……」

真っ白なシーツをよじらせながら、伸ばした手をナイフごと自分の身に引き寄せる。

薄い段ボールでできた華奢なナイフが、強く握りしめた手のひらに食い込む。