ただあの子になりたくて



「かわいいかわいい妹よ、私たちはまたあなたと一緒に暮らしたいのよ」

「このナイフで王子の心臓を刺すの」

「そうすれば人魚に戻れるわ。どうか、私たちのところへ戻ってきて」

オレンジにブルーにピンクに、目移りしてしまいそうなほど美しい尾ひれをつけた姉たちが、私を囲む。

狂おし気に眉根を寄せた姉たち。

私の両手の上にのせられた、銀紙がはられて光るあまりに軽すぎるニセモノのナイフ。

私は俯いたけれど、頷きはしなかった。

練習とは違う私の演技に、姉役の子たちは戸惑い顔を見合わせながら、ぎこちない足取りではけていく。

それでも私は前も向かずただ突っ立っていた。

この日初めて客席がざわめきだす。