私は人魚の尾ひれをたたんで床に座り込んでいるけれど、遠い彼だけしか目には入らない。
「なんて素敵な王子様……」
全部、唇から洩れるのは、偽りのない私の気持ち。
ずっと嘘ばかりついてきた私の、本当の気持ちばかりが、人魚姫の私の口からこぼれていく。
真っ黒なとんがり帽を被った老婆に扮した女子がくっくと目の前で笑えば、私は本気で手を合わせ心から叫ぶ。
「それでもいいわ。王子様と一緒に、いられるのなら」
愚かで声が震えた。
私があの日悪魔に望んだことと同じ。
今になれば、それがどれほど間違っていたことなのかわかる。
でも、あの時は何もわからなかった。
この身をもって知った痛みの道を、人魚姫の物語がどんどんたどっていく。


