ただあの子になりたくて



もっとはやく気づいていれば、こんな私にももう少し違う未来があったかもしれないと。

でも私はきつく瞼を閉じて否定する。

それはきっと違う。

馬鹿な私は、この道を歩まなかったら、きっと、絶対に気づけなかった。

やがて体ははなされて、椿のお母さんは目を丸くして、私の冷たい腕をさすりだす。

「こんなに濡れて、こんなに冷えて、こんな時間までどこに行ってたの?」

ところどころ荒れた指先に、しごくようにさすられれて、冷え切った腕に体温が移りはじめる。

やっと血が巡りだしたように、肩がほぐれていく。

私はしゃくりあげないように我慢しながら、ぼそりと言う。

「前に少し話したけど、なずなの容体が急変して、病院に……」