氷のように冷え切った足を、床の冷たさが更に責め立てる。

そんな中、お母さんの叫びが轟いた。

「私が、お腹痛めて産んだ子だもの」

胸は、火が付いたみたいに熱くなる。

見開いた目に、一気に涙が溢れ出る。

お母さんがソファーから立ち上がろうと暴れる。

お父さんが真正面から、お母さんを抱きしめるようにおさえこむ。

お母さんの手足がソファーを叩いて物々しい音が溢れていく。

「なずなと、代わらせてよ!」

悲痛な金切り声が全身を打ち付ける。

お父さんにしがみつき、のけぞって泣きわめくお母さん。

私はふらふらと後退すると、いてもたってもいられず踵を返した。

靴下と靴を一息に拾い上げ、裸足のまま走り出す。

夜空へと続く玄関は開け放ったまま、私は足りないものだらけの三日月が光る空の下を、ひたすらに駆けた。