ただあの子になりたくて



振り返ったら、閉まりゆくドアの、細い光の隙間には、私を名残惜しむお母さんの姿さえなかった。

私は震える手を無理やり握りしめる。

そんなの嘘だと心の中で唱える。

でも、胸は痛く、息が浅くなっていく。

「私、あなたに苛立って、色々嫌になって、いつもあの子とケンカしてた。母親失格よ」

お母さんは顔を覆い嘆く。

悲しくとがった声が飛び散る。

「そんなこと言ったら俺もだろ」

ぽつり、お父さんの声が混じる。

しゃがんでいたお父さんは、ソファーの前に座り込む。