ただあの子になりたくて



この家の中に、愛などどこにもなかったのだから。

「ああっ……! 抱きしめて止めればよかった……!」

はじける甲高い声。

私の爪は壁をひっかいた。

直後すぐに私ははっとして2人を見る。

気づいたそぶりはない。

けれど、壁から離れた手が力なく震えている。

抱きしめる?

止める?

あの日、私は家から闇夜へ一人飛び出した。