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長い髪の毛先から、丸い雫がしたたり落ちる。
微かに手のひらを天に向けてみるけれど、冷えたその手には何の雫もふり落ちない。
雨は上がったのに、馬鹿みたいにずぶぬれな私は、アスファルトをまた濡らす。
重い頭をやっと上まで上げて、私は睫毛を震わせた。
視界を埋め尽くす、どこまでも深い藍の空。
どんな絵の具を混ぜようと、明るくはなれないほどの暗い世界。
大きく欠け落ちた、線のように細い三日月だけが、心細く光っている。
私の睫毛の先についた涙がぼやけてきらめいて、私は手で払った。
でも、瞼のふちに涙がまたせりあがる。