酷く嬉しくて悲しい。

彼の、知ってたんだという言葉。

胸が張り裂けそうだった。

彼は忘れているとばかり思っていた、遠い中学の時の記憶。

私が彼に恋をした宝物のような瞬間。

彼があんなたわいもない瞬間も、私の性格も覚えていてくれたんだと思うと舞い上がってしまうくらい嬉しくなる。

でも、私は大きく腕を振る手をきつくきつく握りしめた。

心の中で本当の私と、今の偽りの私がせめぎあう。

彼に本当の私の名を呼んでほしいと、もちろん強く思う。

本当の私で愛されたいと、あんな選択をするほど強く願った。