そう言って、悩み続ける優しい彼をおいて立ち去る。

私は卑怯だ。

大好きな人の悩みも晴らせない。

それどころか、自分のことでいっぱいいっぱいになっている。

そんな弱みから逃げたくて私は廊下へ駆け出した。

私ただ一人の足音は、一発一発、自分の頬をはたきつけるように響く。

いくつも後ろへ滑っていく窓。

白く強い光が、私の醜さをあぶりだすようで恐ろしい。

何度も何度もわけのわからない涙をぬぐう。

自分でも自分がわからないのだ。