ただあの子になりたくて



やり場のない手が、胡坐を組んだ脚を、爪が白くなりそうなほど打ち震えながら握りしめている。

誰のことを話しているのかはすぐにわかった。

だから、ドキリと心臓が跳ね上がる。

「色々できるようになったつもりでいたんだ……。でも、全然そんなことなかった」

気弱にゆるりと横へふられる首。

彼のいつも前を見ていた瞳がますます下を向く。

「知ってたはずなんだよ……。苦労を一人で引き受けて笑ってごまかしてること」

私ははっとして胸を締め付けられる。

呼吸ひとつするにも、息が引っかかって、体が震える。

思わず、彼に伸ばしかけた手を、咄嗟に引っ込める。

「近くにいたくせに、何も気づけなくて、何もできなくて……」