「あっさりしてたかな」
私はぽかんとして肩から力ががくりと抜ける。
尚も監督は立ち上がって続ける。
「王子様に恋する気持ちと、かけがえのない愛する家族との狭間で、なんかこう、もっともっと揺れ動いて、もがいて、悩んでほしいの」
私は砂をつかむように、床へ押し付けた手を握りしめた。
そんなことを言われてもわからない。
私は精一杯に演じた。
人魚姫は結局、家族などよりも王子を選ぶのだ。
もう王子のために人魚姫は大切なものをなげうった。
なのに今更、家族を顧みるわけがない。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…