私は吸い寄せられるように傍らへ膝まづくと、ゆっくりと両手で作り物のナイフを構えた。
「王子様、さようなら。私は人魚に戻ります……」
唇から消え入りそうな声が漏れていく。
別れのキスをしようと、体をかがめていく。
綺麗な顔で目をつむる蒼介の顔が近づいてくる。
「カーット!」
予期せぬ声に、私はその場で凍り付いた。
信じられない思いで目をみはる。
持っていたナイフは床に転がった。
ここまでやったら、ラストまで通してやるものではないのか。
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